商標権侵害は、①登録商標と同一・類似の商標を、②指定商品・役務と同一・類似の範囲で、③商標としての使用態様で使用した場合に成立します。商標法2条3項・25条・37条を根拠に、その判断枠組みを整理します。
商標権侵害の基本構造
商標権侵害が問題となるのは、登録商標権者以外の者が、登録商標と同一又は類似の範囲で当該商標を使用した場合です。商標法は、商標権者に「専用権」(同一の範囲での独占的使用権)と、類似の範囲まで及ぶ「禁止権」を認めており、Amazonにおける知的財産権侵害の申し立ての多くは、この禁止権の範囲、すなわち類似の商標・類似の商品役務の該当性を巡って生じます。侵害の成否を検討する際は、商標の同一・類似、商品・役務の同一・類似、商標としての使用(商標的使用)への該当性という3つの視点を順に確認する必要があります。
「使用」の定義(商標法2条3項)
根拠: 商標法第2条3項 この法律で標章について「使用」とは、商品又は商品の包装に標章を付する行為、標章を付した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為等、各号に掲げる行為をいう。
商標法2条3項は、「使用」に該当する行為を号ごとに列挙しています。商品又はその包装への標章の使用のほか、標章を付した商品の譲渡・輸出入、インターネット等の電気通信回線を通じた提供、広告・価格表・取引書類への標章の表示なども「使用」に含まれます。Amazon出品との関係では、商品本体への標章の使用に加え、商品ページという「広告」「電気通信回線を通じた提供」の場での表示が問題となる場面が多く、出品ページの作成行為そのものが「使用」に該当し得る点に注意が必要です。
専用権(25条)と侵害とみなす行為(37条)
根拠: 商標法第25条(商標権の効力) 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。 根拠: 商標法第37条(侵害とみなす行為) 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用等は、当該商標権を侵害するものとみなす。
25条が定める専用権は、登録商標と同一の商標を指定商品・指定役務について使用する権利です。もっとも、同一の範囲に限定すると保護が不十分になるため、37条は、類似の商標を類似の商品・役務に使用する行為や、模倣品・偽造ラベルの所持・製造など侵害の予備的行為までを「侵害とみなす行為」として拡張しています。Amazonへの申し立てで問題となる事案の多くは、この37条が対象とする「類似」の範囲、すなわち登録商標と完全に同一ではないものの類似すると評価される商標の使用です。
商標・商品役務の類否判断
商標の類否は、一般に、外観・称呼・観念を総合的に考察し、取引の実情を踏まえて、需要者が両者の商品又は役務の出所について混同を生じるおそれがあるかどうかによって判断されるとされています(氷山印事件、最高裁判所第三小法廷 昭和43年2月27日判決)。 商品・役務の類否についても、同一の商標を使用した場合に同一の営業主の製造・販売に係る商品又は役務と誤認混同されるおそれがあるかという観点から判断されます。Amazon上では、カテゴリーが近接していても、需要者から見て出所の混同を生じるおそれがないと整理できる場合には、この段階で侵害の主張に反論できる余地があります。
商標的使用に当たらない場合
根拠: 商標法第26条1項6号 商標権の効力は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標には及ばない。
登録商標と同一又は類似の標章を用いていても、それが自他商品・役務の識別標識として使用されていない場合(商標的使用に当たらない場合)には、商標権の効力は及びません。商品の説明として一般的な名称・産地・品質等を普通に用いられる方法で表示しているにすぎない場合や、装飾・デザインの一部として表示され出所表示機能を果たしていない場合が該当し得ます。Amazon出品でブランド名を比較情報・互換情報として記載する場合など、表示の趣旨によっては商標的使用に当たらないと整理できることがあります。
Amazon出品における典型的な侵害場面
Amazonの知的財産権侵害の申し立てで典型的に問題となるのは、①商品本体・パッケージに登録商標と同一又は類似の標章が付されている場合、②商品ページのタイトル・説明文・画像に権利者のブランド名やロゴを許諾なく使用している場合、③検索キーワードとして商標を埋め込んでいる場合です。これらはいずれも商標法2条3項の「使用」に該当し得る行為であり、指定商品・役務との類否、商標的使用該当性を踏まえて初めて侵害の成否を判断できます。申し立てを受けた際は、まず自らの表示行為がこの枠組みのどこに位置づけられるかを整理することが第一歩となります。
真正品の並行輸入・転売については「商標権の消尽と真正品の並行輸入・転売」を、商標登録のない模倣品対応については「不正競争防止法と模倣品」をあわせてご参照ください。Amazonから商標権侵害の申し立てを受けたセラーの具体的な対応手順は「Amazon商標権侵害の申し立てへの対応ガイド」で、権利者の皆さまへのご案内は「権利者・メーカーの皆さまへ」でご確認いただけます。なお、本記事は一般的な情報提供であり法的助言ではありません。個別の事案については弁護士・弁理士等の専門家にご相談ください。