真正品であることの立証は、仕入請求書と流通経路の説明を柱に、正規代理店証明や現物の突合を組み合わせて行います。証拠は個別に示すのではなく、事実の流れとして一体的に組み立てることが重要です。
立証の基本構造
Amazonの真贋調査や知的財産権侵害の申し立てに対して真正品であることを示す場合、単発の書類を提出するだけでは足りません。「どこから、いつ、何を、いくつ仕入れ、それが申し立ての対象商品とどう同一なのか」という一連の事実を、書証と現物とで裏付けて初めて説得力を持ちます。証拠は個々に示すのではなく、時系列の物語として組み立てる必要があります。特に、Amazonの真贋調査では提出期限が設定されていることが多く、後から証拠を後出しで積み増すよりも、最初の提出時点で構造化された証拠一式を示すほうが、審査の心証形成において有利に働くと考えられます。
仕入請求書の要件
真正品の立証で中心となるのが仕入時の請求書(インボイス)です。実務上、次の情報が記載され、申し立て対象商品と突合できることが求められます。
- 発行者(仕入先)の名称・所在地・連絡先
- 宛名(自社の名称)
- 発行日(取引日)
- 商品名・型番等、対象ASINと同一性を確認できる情報
- 数量・単価
これらの記載が揃っていても、宛名が自社と異なる、日付が販売開始時期と整合しない、商品名が抽象的で対象商品と紐付かないといった不備があると、証拠として十分に評価されません。 請求書の保存・整理は、仕入れの都度、対象商品ごとに行っておくことが望ましいといえます。
流通経路の説明
請求書という「点」の証拠に加えて、その仕入先がどのような流通経路上に位置するのかという「線」の説明が必要です。メーカーから直接仕入れているのか、正規代理店・卸業者を経由しているのか、並行輸入品であれば輸入元がどのような契約に基づき商品を取得しているのかを、契約書や取引基本契約、継続的な取引履歴とあわせて説明できると、真正品であることの信用性が高まります。
正規代理店・メーカー直の証明
仕入先がメーカー本体又はメーカーが認定した正規代理店である場合には、その関係を示す資料(代理店契約書、取引口座開設の案内、メーカー発行の証明書等)を提示することで、流通経路の適法性を直接的に立証できます。 このような資料が得られない場合でも、継続的な取引実績や、仕入先自身が公式サイト等で正規代理店であることを表示している状況を補完的に示すことは可能です。なお、正規代理店であることの表示は仕入先の一方的な自称にとどまる場合もあるため、可能であればメーカー本体に直接問い合わせて確認することも、より確実な立証につながります。
フリマ仕入れの問題
フリマアプリ等の個人間取引で仕入れた商品は、発行者の実在性や取引の継続性を示す請求書が得られないことが多く、真正品の立証が困難になります。特に新品として販売する場合、フリマアプリでの仕入れは仕入れルートとしての適法性・追跡可能性に疑義を持たれやすく、真贋調査で最も苦戦しやすいパターンです。中古品として販売する場合や、大手リユース事業者からの仕入れであれば、その事業者から改めて請求書の発行を受けられることがあり、対応の余地が広がります。今後の仕入れにおいては、フリマアプリ等の個人間取引を避け、請求書を発行できる事業者からの仕入れに切り替えることが、真贋調査対応の観点からは望ましい予防策となります。
写真・現物と証拠を組み立てる順序
書証に加えて、商品本体・パッケージ・付属品・シリアル番号等の写真、可能であれば現物の提出も、真正品であることの補強証拠となります。証拠を提示する際の順序としては、①仕入先と仕入日を示す請求書、②流通経路の説明、③正規性を示す補助資料、④商品現物・写真による対象ASINとの同一性確認、という流れで整理すると、審査担当者にとって理解しやすい構成になります。
請求書以外の補完的な証拠
仕入請求書が保存されていない場合や記載内容が不十分な場合には、代替的に、銀行振込明細やクレジットカードの利用明細などの支払記録、仕入先とのメールやメッセージのやり取り、納品時の伝票・送り状などを補完的な証拠として提示することが考えられます。 これらは単独では請求書ほどの証明力を持ちませんが、複数の証拠を組み合わせることで、仕入れの実在性を裏付ける材料になり得ます。
並行輸入品や国内転売品が商標権侵害に当たらない法的根拠は「商標権の消尽と真正品の並行輸入・転売」で、これらの証拠をAmazonへの異議申し立てや権利者への撤回依頼にどのように活用するかは「Amazon知的財産権侵害の申し立てと撤回の手続き」で解説しています。商標権侵害の基本的な成立要件は「商標権侵害の成立要件」をご覧ください。Amazon商標権侵害の申し立てを受けた場合の対応は「Amazon商標権侵害の申し立てへの対応ガイド」、権利者の皆さまへのご案内は「権利者・メーカーの皆さまへ」をご参照ください。なお、本記事は一般的な情報提供であり法的助言ではありません。個別の証拠評価については弁護士等の専門家にもご相談ください。